ポップカルチャー好きのブログ

好きなドラマ、音楽、舞台の感想を気ままに書きます。

『初めて恋をした日に読む話』最終話

『はじこい』最終話のテーマは、なんと「ユリゲラー」。
最初はこのテーマに笑ってしまったが、なんとも『はじこい』らしい最終話だった。「ユリゲラー」が象徴しているのは三つ。由利(横浜流星)、春見(深田恭子)と由利のジェネレーションギャップ、そしてこのドラマを通して描かれている「普通じゃない」というテーマである。

交通事故で怪我をし、入院している春見がスマホで由利の連絡先を見ながらつぶやく。

春見:(ナレーション)死ぬかもしれない。そう思ったとき思い浮かんだのは…浮かんだのは…「ユリゲラー

1話から春見は常々、由利を色んなあだ名で呼んできた。「ゆりこ」など、中には変なあだ名もたくさんあった。「ユリゲラー」もそんな春見の変なあだ名の一つとして発せられたが、1話からの伏線が最終話で回収された形になる。

その後のシーンにて、「入院中暇だから趣味を見つけたい」と言っていた春見のために、八雲(永山絢斗)が様々な雑誌を買ってきた。その中の一冊が「超常現象の世界」という雑誌だった。最終話では春見が何度もこの雑誌を見つめながら由利に思いを馳せたり、スプーン曲げが新しい趣味と言い張りながら思い詰めた表情でスプーンを見つめたりしていた。「ユリゲラー」から由利を連想していたのだ。

また、最終話ではこれまでの回想シーンを用いながら「普通じゃない」「変な大人」というテーマが繰り返されていた。春見の勤める塾の塾長(生瀬勝久)は常々「由利君は普通じゃない」と言ってきた。また由利は春見に常々「変な大人だ」と言ってきた。
春見は、由利に「八雲と結婚する」と嘘をついてさよならを告げた後、山下(中村倫也)にこのように話している。

春見:「私やっと今、真っ当な大人になれた気がする。」

山下:「真っ当な大人ねぇ。」

「変な大人」に対し、「真っ当な大人」という表現が用いられている。

 八雲と結婚するのが嘘だと知った由利が再度春見のもとを訪れると、改めて春見は由利に一緒にいられないことを告げる。由利の将来や、春見自身の年齢を考えての決断である。
出演するキャラクターが一同に会した松岡(安達祐実)と西大井(浜中文一)の結婚祝いにて、春見は由利とのやり取りを告白。それに対して、塾長や山下が以下のように返した。

春見:「真っ当な大人として、誠実にさよなら出来たと思う。嘘もついてない。」「大人として常識的に考えたら、誰だって…」

塾長:「普通ですね。極めて普通です。春見先生は普通の大人じゃないと思ってたんですけどねぇ。」

山下:「由利、昔俺に言ってたぞ。変な大人になりたいって。」

春見は由利から「先生みたいな大人に俺もなれますかね」と言われたことを思い出す。そしてユリゲラーのごとく春見の持っていたスプーンは折れ、はっとした春見は自分を取り戻す。自分の選択は間違っていたと気付いたのだった。
スプーン曲げというコミカルな表現を用いて、春見はやはり「普通じゃない」ということが表されていた。

由利に会いに東大の教室に乗り込んだ春見は、自分は由利とジェネレーションギャップがあるけど本当に良いのか、ということを「小室ファミリー」や「傷跡がなかなか治らない」といった表現を用いながら伝える。その中で由利に対して「ユリゲラーとか知らないでしょ」とも言い放つ。それでも春見が良いと、6話と同じ台詞を用いて「何回言わせんだよ」と伝える由利。

由利:「やっぱ変な大人だな。」

春見:「ばーか。残念だけど、君ももうすぐそうなるよ。」

1話から最終話まで「変な大人」の春見と、「普通じゃない学生」の由利を描いてきた本作。普通じゃない春見と由利だからこその選択でハッピーエンドを迎える形となった。

春見:(ナレーション)「私にはもう、君みたいな無敵な時間はない。だけど、好きな色を選んで笑うのも、無茶な道を進んで泣くのも自由。全部自分のせいに出来る歳だ。」

由利に会いに東大に向かう際の春見のナレーションである。親の期待に応えるために勉強を頑張ってきたが、東大受験に失敗し、それからは何となく毎日を過ごしてきた春見。由利に出会って、自分の意志で、責任を持って選択が出来るよう成長した姿を表している。
この春見の言葉は、これから様々な選択をする人の背中を押したに違いない。 ただの恋愛ドラマではなく、自分の選択に対する後押しや決断の勇気がもらえるような、そんな素敵なドラマだった。