ポップカルチャー好きのブログ

好きなドラマ、音楽、舞台の感想を気ままに書きます。

『きのう何食べた?』1話

仕事で嫌なことがあっても、恋人と喧嘩をしても、丁寧に作った食事を囲めば幸せな気持ちが戻ってくる。そんな日常の大切さを思い出させてくれるドラマである。

よしながふみによる同名漫画のドラマ化。弁護士の筧史朗(西島秀俊)と美容師の矢吹賢二(内野聖陽)は、お互いを「シロさん」「ケンジ」と呼び合う恋人同士である。シロさんが毎日作る美味しそうな食事と、それを囲みながら話す二人の穏やかな日常を描いている。

原作を読んだことがなかったため一話読んでみたが、非常に再現度の高いキャスティングである。またシンプルな劇伴、演出、カメラワークが、原作の素朴な世界観をよく表している。そしてシロさんが作る美味しそうな料理が、映像化により格段に魅力を増している。料理漫画の映像化は料理シーンが醍醐味だと強く感じた。

原作と大きく違うと感じたのが、”同性愛”であることの描写である。漫画では台詞の中に「同性愛」「ゲイ」とはっきり書かれていることが多いが、ドラマでは直接的な台詞が非常に少ない。同性愛は何も特別なことではなくて、悩みやすれ違いがあること自体は異性同士のカップルと変わりがないのだ、というメッセージ性がドラマを通して分かりやすく表現されており、好感が持てる。

一番印象に残ったのが、ケンジを演じる内野聖陽の演技である。 あからさまなゲイっぽさはないのに、言葉の節々に愛らしさが感じられる。シロさんの炊き込みご飯を食べて言った「すっごい美味しい」の言い方など、絶妙である。母親との電話で同性愛者であることをカミングアウトするよう言われ辟易としているシロさんに対し、ガッツポーズのジェスチャーで応援するケンジの姿も良かった。

ドラマ終盤、カムアウトする/しないのスタンスの違いで喧嘩をしたシロさんとケンジが食卓を囲みながら、以下のような会話をする。

ケンジ:「ニンニクと玉ねぎどっさり乗ってるこれ、俺大好き。」

シロさん:「接客業だから、休みの前の日くらいしか思いっきり食えないだろ。」

ケンジ:「俺が明日休みだから…幸せ。」

日常の中で相手の思いやりを感じる瞬間こそ「幸せ」なのだと思い出させられる。穏やかに描かれるシロさんとケンジの日常が今後も楽しみである。