『初めて恋をした日に読む話』5話
はじめまして。ドラマ、音楽、舞台、映画などのポップカルチャーが好きな社会人です。これから気ままに感想を残していきたいと思います。
まずは『初めて恋をした日に読む話』の感想から。
ただイケメンを並べただけのドラマではない
『はじこい』はイケメンを拝んで胸キュンできる分かりやすい王道ラブコメなので、世の女子の間で話題となっているのは納得だ。
しかし私としては、無駄な台詞が一つもなく、演出や構成が良く出来たドラマであるところが気に入っている。
授業シーンとドラマ内容のリンク
東大受験がテーマなので、毎回ドラマ冒頭に授業シーンがあるが、授業の内容がその回のテーマとなっており、終盤の見せ場とリンクしている。
5話の場合は、「現代文の解答に主観はいらない」がテーマだった。
ドラマ冒頭、深田恭子演じる春見が、由利(横浜流星)、江藤(吉川愛)に現代文の講義をする中で
春見:「現代文の答えに、解答者の主観はいらないの。」
「作者の意図を読み取ってそのまま答えれば良い。」
「相手の気持ち、心情を先入観なく正確に理解しないと話し合えない。」
「人間関係と一緒。」
と教える。
ドラマ中盤では、春見と由利がバスで会話するシーンで以下のように現代文が用いられる。
春見:「ユリユリはきっと現代文が得意になるね。だって人物の心情が分かる優しい読解力を持ってるから。」
また、春見と山下(中村倫也)が飲んでいるシーンでは、春見が現代文の講師であるという会話をきっかけに
山下:「現代文か、俺一番苦手だわ。」
「文学なんて解釈の仕方こっちの自由だろ。」春見:「解答者の感想、主観はいらないの。」
「たった一つしかない作者の意図、心情を理解できるかを見てるの。」山下:「だから俺は駄目なんだな、全然理解できないままだったわ、嫁さんの心情。」
と会話した上で、山下の離婚話に綺麗に繋がる。
そして終盤の見せ場、春見と山下が一緒にいるところを由利が目撃し、由利が怒りにも似た表情で去って行ったところで以下のやり取りがなされる。
山下:「問題です。高3男子が毎日毎日、33歳女性担当講師の写真を持ち歩いて勉強していました。さて、この時の高3男子の心情を分かりやすく説明しなさい。」
春見:「極めて信頼関係のある教師と生徒の関係。」
山下:「解答者の主観はいらないんだろ、作者の意図は一つだ。」
と話した上で、山下は、高校時代に春見を好きだった当時の自分と重ね合わせ、由利も春見のことが好きだと伝える。
なんとも綺麗な伏線回収。原作にもあるやり取りなのか調べたところ、ドラマならではのようだ。1時間のドラマの中で繋がりを持って終盤の見せ場に持って行く演出に感心した。
ちなみに4話ではベンサムの「快楽と苦痛で幸福を計算する」がテーマになっていた。冒頭の授業でベンサムを扱った後、中盤で由利が「ベンサム間違ってんじゃね」と言うシーンも挟みつつ、終盤の見せ場では、インフルエンザにかかったおかげで春見と一緒にいられる由利が「わりと今幸せ」という台詞を言う。インフルエンザの苦痛と、春見と一緒にいられる快楽を天秤にかけて「わりと今幸せ」というわけだ。
由利の言った台詞を春見がそのまま言う
授業とドラマ内容のリンクだけでなく、ドラマの中では度々、由利の台詞をその後春見がそのまま言うシーンがある。
5話の場合は
「無理して笑わなくていいよ。」
だった。
由利が春見に言った後、春見が山下に向けて言っていた。こうした演出から、春見が自分の気付かない所で由利から大きな影響を受けていることが分かる。
また5話では春見が「無理して笑わなくていいよ」と言った直後、キャバクラのシーンで松岡(安達祐実)が八雲(永山絢斗)に「無理して飲まなくていいから」と言っており、ドラマ内でパロディのように使われていた。こういう細かい演出も粋で良い。
イケメンを起用して少女漫画を映像化するだけでも話題性があると思うが、こうして一つ一つの台詞や演出にもこだわっている所に制作陣の本気が感じられ、とても好感が持てる。今後も楽しみなドラマである。